英国ロイヤル・オペラ 2016/17 《ノルマ》でシネマシーズン開幕!

昨日、英国ロイヤル・オペラ・ハウス 2016/17 シネマシーズン開幕オペラ、ベッリーニ《ノルマ》の試写会に行ってきました。タイトルロールを歌ったブルガリア人ソプラノ歌手、ソーニャ・ヨンチェヴァが圧倒的な歌と演技で凄い、本当に凄い舞台でした!

ロンドンのロイヤル・オペラで《ノルマ》の新演出は1987年以来の約30年ぶりだそうで、演出を手がけたのはスペインの前衛パフォーマンス集団ラ・フラ・デルス・バルスのアレックス・オレです。オレはこの物語を現代の(非合法な軍事的)カトリック宗派と世俗的な権力とのせめぎ合いの中に描き、暗いステージをキリストの磔刑像で埋め尽くし大きなインパクトを与えました。現代に移した事で、この物語の残酷さが際立ちます。

 

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アレックス・オレ演出、アルフォンス・フローレス美術の舞台
(c) ROH/BILL COOPER

 

 

昨年は見損ねたので、英国ロイヤルの映画を観たのはこれが初めてですが、カメラ・アングルや編集が大変優れていてオペラにぐいぐい引き込まれました。演劇の国だけあって、ソロ歌手や合唱団の演技、とくに顔の表情なども上手く、素晴らしい臨場感です。パッパーノの指揮も全体を牽引していました。

しかし、オペラが進むにつれヨンチェヴァの歌があまりに素晴らしいので、私の心はすっかり彼女の演じたノルマに占領されてしまいました。ヨンチェヴァはまだ若いけれどしっかりしたテクニックを持ち、そして特に激しい気性とポリオーネへの愛情の表現が卓越しています。(ちなみにポリオーネのジョセフ・カレヤも適役でした。)

 

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ソーニャ・ヨンチェヴァのノルマ
(c) ROH/BILL COOPER

 

実はこの新演出のノルマ役にもともと予定されていたのはアンナ・ネトレプコでした。しかし今年の五月にネトレプコが降板を発表し、急遽呼ばれたのがヨンチェヴァだったのです。勿論、彼女はすでにMETやロイヤルのスターですが(ロイヤルではすでに一度グノー《ファウスト》でネトレプコの急な代役を務めているそうです)、このノルマを大成功させて、英国ロイヤルのシーズン開幕を華々しく飾ったことによって、また一つ大スターへの階段を昇ったようです。こうして次代のディーヴァは誕生するのですね。

 

英国ロイヤル・オペラ 2016/17 シネマシーズン、《ノルマ》は東京では11月25日から12月1日までの予定。そして、この後も《コジ・ファン・トゥッテ》《ホフマン物語》《イル・トロヴァトーレ》《蝶々夫人》そしてヨナス・カウフマン出演予定の《オテロ》まで名作が目白押しです。
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