講演会「モバイルフォト プロジェクト インスタグラムで見るイラン」

今日は九段下のイタリア文化会館で「モバイルフォト プロジェクト インスタグラムで見るイラン Mobile Photography Project – La vita in Iran raccontata su Instagram」という講演会の通訳をしました。

イタリア人の写真家、ジョルジョ・コズリッチ・デ・ペチーネ氏とジュリオ・ナポリターノ氏の二人が始めた、スマートフォンやタブレットを使って写真を撮影する人達のためのプロジェクトです。

Webサイト14&15 Mobile Photographers (こちらです)をベースにして、インスタグラムやSNSに投稿された大量の写真の中から、自分のスタイルを持ち、一貫して写真を撮り続けている人を探しだし、本の出版や展覧会、写真の販売などを通して広く紹介していくというものだそうです。サイトが立ち上がったのは約一年前。このプロジェクト名の『14&15』とは何かというと、お二人の誕生日をくっつけたものだそうです(笑)。

今回の講演ではそのプロジェクトの中でも、現在進行中のイランに関する企画の話がメイン・テーマでした。

きっかけとしては、Instagram(インスタグラム)のアカウントを作って、世界中のモバイル写真家達と交流をはじめたところ、なぜかイランからの写真投稿が多い事に気がついた。しかもその写真が美的にも内容的にも素晴らしいものが多い。それならばと、イランの人達が思う存分、イランの現代について写真を投稿できるハッシュタグ(#1415IRAN)を用意して、イランの今を見るための窓、もしくはイランに関する定点観測が出来る場所をつくってみた、ということでした。その結果、数ヶ月の間に1万1千点を超える写真が集まり、その写真を使ってローマで展覧会を開き、また、これからクラウドファウンディングをして写真集を出す予定だ、ということです。

その集まった写真はInstagramや彼らのサイトで実際に見ることが出来ますが、私にとっては本当に新しい世界がそこには広がっていました。これまで恥ずかしながらイランのことはほとんど知りませんでしたが、長い歴史と文化がある国であることはこれらの写真からも容易に理解できます。

ソーシャル・ネット・ワーク(SNS)の与える新しい可能性についての考察も大変興味深いものでした。これまでは名のある写真家しか自分の写真を多くの人に発信する手だてはなかった。それが現在、スマホやこれらの新しいツールの普及により、写真の世界にもある意味デモクラシーが訪れ、無名の人でも自分の写真を大勢に見てもらえる可能性が出て来た。

ただし、インスタグラムやFacebookなどの特徴としては、毎日、あまりにも多くの人が、あまりにも多くの写真を投稿するので、一週間前の写真はもう過去のものになってしまう。せっかく生まれて来た新しい良さを持った写真の数々の中から、人々の記憶に残る価値のある写真を残して行きたいという、ある意味時代に逆行する試みを、SNSからすくいあげた写真を自分たちのプラットホームに掲載し、またその中のごく一部分を本として残す、という方法でやろうとしているのだそうです。

ここですぐに分かるのは、洪水のような写真の中から、残したい写真を選ぶ作業が大変だ、ということです。しかし、ナポリターノ氏にその質問をしたところ答えは、「結局、これまでも僕たちは数えきれない写真を撮って、それを全部チェックしては残すべき写真を選んできたんだ。同じことだよ。」とのことでした。講演会のトークでは、この選ぶ、という作業には大きな責任がともなうことは我々はよく自覚している、とも語っていました。

 

 

1415iran
左がコズリッチ氏、右がナポリターノ氏です。講演の後の記念写真。

 

ところで、講演通訳の準備をしていた時に、たまたまある映画を見つけました。世界の映画祭の賞を総なめにした大変有名な映画だそうです。

『別離 جدایی نادر از سیمین』
監督・脚本・製作 アスガル・ファルハーディー
製作総指揮 ネガール・エスカンダルファール

出演者 レイラ・ハタミ、ペイマン・モアディ、シャハブ・ホセイニ、サレー・バヤト、サリナ・ファルハーディー他
音楽 サッタール・オラキ
撮影 マームード・カラリ
編集 ハイェデェ・サフィヤリ

現代のイランで、ある家族に起こるトラブルについての物語です。手に汗を握って観てしまいました。新しい窓…これからも大切にしたいです。