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ロイヤル・オペラ『ホフマン物語』シネマで公開!名舞台を観る最後のチャンス

ロイヤル・オペラ・ハウス(ROH)のシネマシーズン試写会でオッフェンバック作曲『ホフマン物語』を観ました。本日(1月27日)から映画館で公開です!

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(C) ROH. PHOTOGRAPHER CATHERINE ASHMORE

1980年にプラシド・ドミンゴ主演で初演されて以来、長年ROHで愛されて来た名プロダクションです。演出は映画「真夜中のカーボーイ」で有名なジョン・シュレシンジャー。シュレシンジャー監督はオペラが大好きだったそうで、ロイヤルの『ホフマン物語』も映画的な緻密さと豪華な美術セット+衣裳で知られています。これまでドミンゴ、クラウス、ヴィラゾンなど綺羅星のスター・テノール達が歌ってきました。

 

『ホフマン物語』はオッフェンバックの未完のオペラですが、このプロダクションが使っているのはオッフェンバックの新たな自筆譜などが発見される前のシューダンス版です(三人の女たちの登場順番はオランピア、ジュリエッタ、アントニア。ダッペルトゥットはアリア「輝けダイヤモンドよ」を歌う、etc.)。ROHでは、今回がこのプロダクションでの『ホフマン物語』の最後の上演とのことです。

この舞台の魅力は何といっても豪華なセットと、映画さながらのリアルな演出。シネマならではの特典としては、初演の時から所作を担当しているという年配の女性や、出演を続けている俳優がインタビューに登場し、いかに細かく演技を作っていくかを説明することです。もともと演技の上手な英国ロイヤルの合唱団の活躍はこの映画の大きな見所です!

 

 

ROYAL OPERA
(C) ROH. PHOTOGRAPHER CATHERINE ASHMORE

今回、ホフマン役を務めたのはヴィットリオ・グリゴーロ。演技も歌も迫真の出来で良かったです。悪役四人を歌ったトーマス・ハンプソンはやはりカリスマが凄い(特に目力?笑)。そして三人のプリマ・ドンナはそれぞれ良かったですが、私は前回観た『ノルマ』でひいきになったアントニア役のヨンチェヴァの情感のこもった美しい歌に感動しました。

 

 

ROYAL OPERA
(C) ROH. PHOTOGRAPHER CATHERINE ASHMORE

 

 

 

 

 

 

 

英国ロイヤル・オペラ 2016/17 《ノルマ》でシネマシーズン開幕!

昨日、英国ロイヤル・オペラ・ハウス 2016/17 シネマシーズン開幕オペラ、ベッリーニ《ノルマ》の試写会に行ってきました。タイトルロールを歌ったブルガリア人ソプラノ歌手、ソーニャ・ヨンチェヴァが圧倒的な歌と演技で凄い、本当に凄い舞台でした!

ロンドンのロイヤル・オペラで《ノルマ》の新演出は1987年以来の約30年ぶりだそうで、演出を手がけたのはスペインの前衛パフォーマンス集団ラ・フラ・デルス・バルスのアレックス・オレです。オレはこの物語を現代の(非合法な軍事的)カトリック宗派と世俗的な権力とのせめぎ合いの中に描き、暗いステージをキリストの磔刑像で埋め尽くし大きなインパクトを与えました。現代に移した事で、この物語の残酷さが際立ちます。

 

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アレックス・オレ演出、アルフォンス・フローレス美術の舞台
(c) ROH/BILL COOPER

 

 

昨年は見損ねたので、英国ロイヤルの映画を観たのはこれが初めてですが、カメラ・アングルや編集が大変優れていてオペラにぐいぐい引き込まれました。演劇の国だけあって、ソロ歌手や合唱団の演技、とくに顔の表情なども上手く、素晴らしい臨場感です。パッパーノの指揮も全体を牽引していました。

しかし、オペラが進むにつれヨンチェヴァの歌があまりに素晴らしいので、私の心はすっかり彼女の演じたノルマに占領されてしまいました。ヨンチェヴァはまだ若いけれどしっかりしたテクニックを持ち、そして特に激しい気性とポリオーネへの愛情の表現が卓越しています。(ちなみにポリオーネのジョセフ・カレヤも適役でした。)

 

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ソーニャ・ヨンチェヴァのノルマ
(c) ROH/BILL COOPER

 

実はこの新演出のノルマ役にもともと予定されていたのはアンナ・ネトレプコでした。しかし今年の五月にネトレプコが降板を発表し、急遽呼ばれたのがヨンチェヴァだったのです。勿論、彼女はすでにMETやロイヤルのスターですが(ロイヤルではすでに一度グノー《ファウスト》でネトレプコの急な代役を務めているそうです)、このノルマを大成功させて、英国ロイヤルのシーズン開幕を華々しく飾ったことによって、また一つ大スターへの階段を昇ったようです。こうして次代のディーヴァは誕生するのですね。

 

英国ロイヤル・オペラ 2016/17 シネマシーズン、《ノルマ》は東京では11月25日から12月1日までの予定。そして、この後も《コジ・ファン・トゥッテ》《ホフマン物語》《イル・トロヴァトーレ》《蝶々夫人》そしてヨナス・カウフマン出演予定の《オテロ》まで名作が目白押しです。
☆詳しくはこちらです。

 

 

 

 

 

フェデリコ・フェリーニ『8 1/2』スケッチで見る誕生の軌跡

ちょっと日にちが経ってしまいましたが… 10月24日(月)に九段下のイタリア文化会館で「フェデリコ・フェリーニ『8 1/2』 スケッチで見る誕生の軌跡」という講演会の通訳をさせて頂きました。

映画監督フェリーニはもともと漫画家、イラストレーターをしていたこともあり、次の映画の内容を練る期間には、その映画の登場人物等に関するたくさんのスケッチを描いたそうです。今回は、イタリア文学者のダニエラ・シャローム・ヴァガータ先生が、傑作『8 1/2』が誕生するまでのフェリーニのスケッチ類をもとに、どのようにこの名画が作られていったかを話す会でした。フェリーニのスケッチはどれも素晴らしく、天才の頭の中を見ることが出来るような大変興味深い講演会でした。

 

 

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そして、講演会の予習の為に見た、フェリーニの映画。凄いですね〜。大昔に見ただけだった『道』『甘い生活』そして『8 1/2』。若い頃の私はオペラが好きだということもあって、ヨーロッパの伝統的な美に憧れていたので、フェリーニよりはヴィスコンティの方が好きでした。しかし、今見るとフェリーニのファンタジーには感嘆しかありません。本当に凄い。あの展開。何という映像美。そして『8 1/2』の結末の、マルチェロ・マストロヤンニ演ずるグイードのあの台詞「人生は祭だ。共に生きよう」。ジーンと来ます

 

このような出会いを与えてくれるイタリア文化会館に感謝です。イタリア文化会館は多方面に渡る興味深いイヴェントをたくさん開催していますが、今年は特に日伊国交150周年なので凄いイヴェントが目白押しです。イタリア語のコアな学会からホラー映画まで(笑)。しかも会館の主催イヴェントは無料!!!ぜひこちらをチェックしてみてください。

 

 

講演会「モバイルフォト プロジェクト インスタグラムで見るイラン」

今日は九段下のイタリア文化会館で「モバイルフォト プロジェクト インスタグラムで見るイラン Mobile Photography Project – La vita in Iran raccontata su Instagram」という講演会の通訳をしました。

イタリア人の写真家、ジョルジョ・コズリッチ・デ・ペチーネ氏とジュリオ・ナポリターノ氏の二人が始めた、スマートフォンやタブレットを使って写真を撮影する人達のためのプロジェクトです。

Webサイト14&15 Mobile Photographers (こちらです)をベースにして、インスタグラムやSNSに投稿された大量の写真の中から、自分のスタイルを持ち、一貫して写真を撮り続けている人を探しだし、本の出版や展覧会、写真の販売などを通して広く紹介していくというものだそうです。サイトが立ち上がったのは約一年前。このプロジェクト名の『14&15』とは何かというと、お二人の誕生日をくっつけたものだそうです(笑)。

今回の講演ではそのプロジェクトの中でも、現在進行中のイランに関する企画の話がメイン・テーマでした。

きっかけとしては、Instagram(インスタグラム)のアカウントを作って、世界中のモバイル写真家達と交流をはじめたところ、なぜかイランからの写真投稿が多い事に気がついた。しかもその写真が美的にも内容的にも素晴らしいものが多い。それならばと、イランの人達が思う存分、イランの現代について写真を投稿できるハッシュタグ(#1415IRAN)を用意して、イランの今を見るための窓、もしくはイランに関する定点観測が出来る場所をつくってみた、ということでした。その結果、数ヶ月の間に1万1千点を超える写真が集まり、その写真を使ってローマで展覧会を開き、また、これからクラウドファウンディングをして写真集を出す予定だ、ということです。

その集まった写真はInstagramや彼らのサイトで実際に見ることが出来ますが、私にとっては本当に新しい世界がそこには広がっていました。これまで恥ずかしながらイランのことはほとんど知りませんでしたが、長い歴史と文化がある国であることはこれらの写真からも容易に理解できます。

ソーシャル・ネット・ワーク(SNS)の与える新しい可能性についての考察も大変興味深いものでした。これまでは名のある写真家しか自分の写真を多くの人に発信する手だてはなかった。それが現在、スマホやこれらの新しいツールの普及により、写真の世界にもある意味デモクラシーが訪れ、無名の人でも自分の写真を大勢に見てもらえる可能性が出て来た。

ただし、インスタグラムやFacebookなどの特徴としては、毎日、あまりにも多くの人が、あまりにも多くの写真を投稿するので、一週間前の写真はもう過去のものになってしまう。せっかく生まれて来た新しい良さを持った写真の数々の中から、人々の記憶に残る価値のある写真を残して行きたいという、ある意味時代に逆行する試みを、SNSからすくいあげた写真を自分たちのプラットホームに掲載し、またその中のごく一部分を本として残す、という方法でやろうとしているのだそうです。

ここですぐに分かるのは、洪水のような写真の中から、残したい写真を選ぶ作業が大変だ、ということです。しかし、ナポリターノ氏にその質問をしたところ答えは、「結局、これまでも僕たちは数えきれない写真を撮って、それを全部チェックしては残すべき写真を選んできたんだ。同じことだよ。」とのことでした。講演会のトークでは、この選ぶ、という作業には大きな責任がともなうことは我々はよく自覚している、とも語っていました。

 

 

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左がコズリッチ氏、右がナポリターノ氏です。講演の後の記念写真。

 

ところで、講演通訳の準備をしていた時に、たまたまある映画を見つけました。世界の映画祭の賞を総なめにした大変有名な映画だそうです。

『別離 جدایی نادر از سیمین』
監督・脚本・製作 アスガル・ファルハーディー
製作総指揮 ネガール・エスカンダルファール

出演者 レイラ・ハタミ、ペイマン・モアディ、シャハブ・ホセイニ、サレー・バヤト、サリナ・ファルハーディー他
音楽 サッタール・オラキ
撮影 マームード・カラリ
編集 ハイェデェ・サフィヤリ

現代のイランで、ある家族に起こるトラブルについての物語です。手に汗を握って観てしまいました。新しい窓…これからも大切にしたいです。

 

 

 

『トリスタンとイゾルデ』トーク&コンサート

本日は《二期会プレ・ソワレ》というイヴェントに出演してきました。東京二期会さん企画で、9月10日(土)からのワーグナー『トリスタンとイゾルデ』公演に向けてのプレ・イヴェントです。場所は幡ヶ谷のMy Space ASPIA アスピアホール。ご来場下さった方はどうもありがとうございました。

トークのメイン・ゲストは昨年、二期会のR・シュトラウス『ダナエの愛』を演出して鮮烈なオペラ演出家デビューを飾った映画監督の深作健太さん。私は聞き役と司会進行を務めさせて頂きました。

イヴェントの冒頭にピアニストの木下志寿子さんが『トリスタンとイゾルデ』の前奏曲を弾かれました。ピアノで弾くと音楽のモティーフや和音が際立って、すぐに独特の『トリスタン』の世界に引き込まれます。

 

深作さんのトークでは、「音楽との出会いは映画音楽。5歳の時に観た『スター・ウォーズ」の音楽から始まり、大学生の頃にたどり着いたのがワーグナー」、「『トリスタンとイゾルデ』をベルリンで聴いた時の衝撃の体験。椅子に座ってバレンボイム指揮の前奏曲を聴いたとたんに気分が悪くなり…(ワーグナー音楽の強烈な作用)」などから、2018年2月にご自身が演出することが決まっている次のオペラ作品であるワーグナーの『ローエングリン』について、そして今という時代にオペラを上演する意義など、とても興味深いお話でした。映画と映画音楽の関係(名作『バトル・ロワイアル』の音楽についてのお話も!)や、オペラの音楽と演出の関係についてのトークも大変参考になりました。深作さんの素晴らしいところは、誰にでも丁寧でフレンドリー、しかしその下で大きな理想と情熱がふつふつと燃えていることでしょうか。これからのご活躍が楽しみです。

後半のコンサートではソプラノの田崎尚美さんがイゾルデ役、テノールの菅野敦さんがトリスタン役で、第2幕第2場の二重唱、そして第3幕のイゾルデのあの名高い「愛の死」が演奏されました。田崎さん、菅野さんは9月の『トリスタンとイゾルデ』公演の主役二人のカヴァー歌手であり、また11月の二期会公演 R・シュトラウス『ナクソス島のアリアドネ』では、アリアドネとバッカスという主役を歌われます。お二人の息のあった歌が素晴らしかったです。合間にはピアノの木下さんが音楽的なことをご説明下さり楽しくてためになるお話でした。

 

終了後は、深作さんにお願いしてツーショットです。ありがとうございました!

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9月10日、11日、17日、18日に東京文化会館で上演される『トリスタンとイゾルデ』、ワーグナーの巨匠ヘスス・ロペス=コボスの指揮、ヴィリー・デッカー演出の話題の舞台です。

公演の詳細はこちら

 

METライブ・ビューイング「ワルキューレ」

METライブ・ビューイングの夏休みアンコール上演でワーグナー「ワルキューレ」を観てきました。東劇です。

アンコール上演だし、映画だし、と思って気楽に行ったら4,600円!!!驚いた… まあ15時スタートで20時過ぎに終わるんですものね。普通のオペラ2本分です。でも再演で、それに映画でねぇ… 窓口でびっくりして一瞬固まってしまいました(笑)。

しかも、開演時間ぎりぎりに行ったのですが大人気で、お席は満席に近かったです。

内容については、以前上演した時にも観ましたが、まあ文句無く素晴らしいです。

ヨナス・カウフマン、エヴァ=マリア・ヴェストブロックの声と表現、そしてブリン・ターフェルの演技が凄くて印象に残りました。顔の表情とかはライブではあそこまでは分からないですよね。

 

それからジェイムズ・レヴァインの指揮。音がつやつやしていて迫力があるし、旋律美。それにハーモニーの持って行き方がとても明確で、素晴らしかったです。

 

9月10日(土)15時からもういちど上映があります。高いとか言いながらまた行っちゃいそうで怖い。メットに行く事を考えれば、ねぇ…(笑)

 

METライブビューイング アンコール2016の詳細はこちらから。

 

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映画「ペット」観てきました!

先日の事ですが、ユニバーサル・スタジオの映画「ペット」を観てきました。字幕版です。

はぁ〜。面白かった。

イタリアにいた頃は映画は殆ど観ていなかったのですが、東京に帰って来てからは、映画好きの友人や、愛する姪っ子ちゃんのおかげで時には映画も行きます。

ゴールデンウィークに恒例の「イタリア映画祭」も観なくては、と思うのですが、私の趣味からするとちょっと難しい(芸術的だったり、シリアスだったり)映画が多いのと、前売りでないとチケットを買えないのが難関になっています。(ちなみに好きなイタリア映画はヴィスコンティです。古い?)

 

 

私が最近観た映画は:

「スター・ウォーズ フォースの覚醒」

「妖怪ウォッチ・シリーズ」

「パディントン」

「羊のショーン」

…お子様か(笑)!?

 

ということで、この「ペット」もその路線上に位置する映画ですが、いや〜、面白かったです。本当に。

画面がカラフルで、カメラ・アングルや描写が実写ではありえない自由さ。そして、お話もやっぱり良く出来ています。勇気をもらい、ほっこりして、たくさん笑って帰ってきました。

私は自分がペットを世話する事が出来ないので、動物は飼いません。私に飼われたら可哀想過ぎると思うので。でも、犬や猫は大好きです。どっちが好きか? …と言われたら。う〜ん。悩む。でも犬ですかね、やはり。

 

ちなみに、私の芸名、もとい、渾名は時には「大熊」、時には「ぶちゃ猫」です(笑)。

 

映画の日本語サイトはこちら(音が出ます)。

 

追記:最近観た映画で、パオロ・ソレンティーノの「グランドフィナーレ」もありました。ジェーン・フォンダが迫力だった…