月別アーカイブ: 2016年10月

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「みんなでオペラ」第二回『ラ・ボエーム』がスペシャル・ゲストを迎えて開催されました!

 

去る10月10日(月曜・祝・体育の日)に西神田の学び舎 遊人さんで開催した「みんなでオペラ」第二回目『ラ・ボエーム』、大好評のうちに終了致しました!

大好評だったのには理由があります(笑)。そうです!事前にちょっぴり告知していた通り、スペシャル・ゲストのソプラノ歌手、宮澤尚子さんが来てくれたのでした!!!

宮澤さんは、たいへん美しい〈ヴェルディの声(ヴェルディを歌うのに理想的な、バランスの取れた磨かれた声のこと)〉の持ち主で、音楽的にも才能豊かな方です。すでに一流の舞台で歌っている宮澤さんですが、私の師匠、永竹由幸先生を通して知り合ったご縁もあり快く参加してくれました。

プッチーニがパリを舞台に若き芸術家達の生活と恋を描いた『ラ・ボエーム』は、青春の美しさと哀しみが煌めくような珠玉の名作ですが、このオペラの主人公ロドルフォが詩人であるだけに、詩(=言葉)と音楽の融合が絶妙な作品でもあります。そこで、第一幕のロドルフォとミミの出会いの場面を、宮澤さん(←ミミ役)と私(←ロドルフォ役!)が、

(1)日本語で台本の読み合わせ(歌わずに)

(2)イタリア語で台本の読み合わせ(歌わずに)

(3)イタリア語で二重唱を歌う(言葉を中心に)

(4)最後に宮澤さんがミミのアリアをオペラの発声で歌う

という四つの段階を経て聴いていただくことによって、いかに言葉が音楽を作っている作品であるかを、皆さんに体験していただく試みでした。電子ピアノでの伴奏はいつもの通り、妹の百合子(=通称:こぐまさん)です。宮澤さんは今年の三月に立川市民オペラでもミミ役を歌い、私はその歌を聴いて感動のあまり滂沱の涙を流したのですが、その彼女が気軽につきあってくれたのは本当にありがたいことでした。

 

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左から、学び舎 遊人の坂元勇仁君、私、宮澤尚子さん、井内百合子(こぐまさん)

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恐れ多くも共演しているっぽい私(汗)

 

学び舎のお教室は机を入れると20人位が定員なので、そのスペースで聴くオペラの発声による「私の名はミミ」は大変な迫力でした。

最後には、宮澤さんにオペラ歌手という仕事についてのミニ・インタビューをさせてもらいましたが、歌手がどのように身体を使って声を作るのかということを分かりやすく話して下さり、大変興味深かったです。

 

 

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さて、次はいよいよ、ロッシーニ。『セビリアの理髪師』です!

「みんなでオペラ」第三回『セビリアの理髪師』

11月7日(月)19時〜

ところ:学び舎 遊人(東京都千代田区西神田 2-4-1 東方学会新館2F)

新国立劇場の2016/17年オペラ・シーズンにあわせて、上演作品を一回一演目ずつ勉強する会です。オペラを観る前に「これだけは知っておきたい!」というポイントが分かります。

*実際に劇場でオペラを観る方も、観ない方も一緒にオペラを楽しむための講座です。

参加料:2,500円

各回20名限定。

主催:ユージンプランニング

予約とお問合せ:
ユージンプランニング(平日10時から17時)
TEL 03-3239-1906
FAX 03-3239-1907

E-mail:manabiya@yujinplanning.com
(メールでご予約の際はイベント名と人数を明記してください)

 

みんなで楽しくワイワイやる会です。皆様のお申込みをお待ちしております!

(勉強会の後は、希望者で居酒屋さん行きま〜〜す。)

 

 

OTTAVA オペラ大好き!『VIVA! OPERA』 2016年10月号

この記事はインターネットラジオ OTTAVA “OTTAVA MALL”の番組「オペラ大好き!『VIVA! OPERA』」の記録です。2016年10月号。OTTAVAさんのページはこちらです。

 

芸術の秋です。9月はたくさんオペラ公演がありました!

《9月のオペラ公演レビュー》

・こんにゃく座の新作オペラ
《グスコーブドリの伝記》
2016年9月14日(水)~18日(日)俳優座劇場
原作:宮澤賢治/台本・演出:しままなぶ/作曲:寺嶋陸也
宮澤賢治生誕120周年記念 第一弾として、賢治自身を色濃く投影した作品と言われている《グスコーブドリの伝記》をオペラ化。
賢治の言葉を美しく響かせる寺嶋陸也の音楽が秀逸でした。

・あいちトリエンナーレ 2016 プロデュースオペラ
モーツァルト作曲《魔笛》
2016年9月17日(土)、19日(月・祝)
愛知県芸術劇場 大ホール
ダンサー、演出家、振付家として世界の一流劇場で活躍している勅使河原三郎が《魔笛》の演出を手がけた。
台詞部分をカットした、音楽と身体表現に集中した舞台が話題に。音楽面も充実の舞台でした。

・東京交響楽団の定期演奏会
ベルリオーズ:劇的物語《ファウストの劫罰》
2016年9月24日(土)サントリーホール(翌日はミューザ川崎シンフォニーホール)
今年70周年を迎えた東響が指揮のユベール・スダーン、そしてファウスト役のマイケル・スパイアーズを始めとする世界の一流歌手を迎えて演奏した《ファウストの劫罰》。多彩なオーケストラと歌の充実の公演となりました。東響コーラス、東京少年少女合唱隊も活躍。

・新国立劇場のオペラ・シーズンが開幕!
ワーグナー 楽劇「ニーベルングの指環」第一日《ワルキューレ》
2016年10月2日(日)から18日(火)
新国立劇場 オペラパレス
飯守泰次郎指揮、ゲッツ・フリードリヒ演出の舞台を、世界レベルのワーグナー歌手が集結して上演。大変聴きごたえのある素晴らしい公演になりました。

 

《10月以降のお勧め公演》

・ロッシーニの神様、アルベルト・ゼッダのスペシャルコンサート!
2016年12月1日(木)19:00
Bunkamura オーチャードホール
ロッシーニの音楽を通して生きる喜びを教えてくれる伝道師、アルベルト・ゼッダ先生の米寿を記念するコンサートです。曲目はロッシーニ作曲の《スタバト・マーテル》そしてめずらしいカンタータ《テーティとペレーオの結婚》。砂川涼子、向野由美子、村上敏明、伊藤貴之、佐藤美枝子、中井亮一、光岡暁恵、鳥木弥生、角田和弘という藤原歌劇団のトップ歌手達が出演する夢のコンサートでもあります!
合唱:藤原歌劇団 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

・ジョナサン・ノット指揮、東京交響楽団の《コジ・ファン・トゥッテ》
2016年12月09日(金)18:30 ミューザ川崎シンフォニーホール
2016年12月11日(日)15:00 東京芸術劇場
演奏会形式でモーツァルトの「コジ」を。東響の音楽監督として活躍中のジョナサン・ノットの指揮で、サー・トーマス・アレン、ミア・パーション、マルクス・ウェルバなど当代随一の歌手達が集結。

 

 

出演者:
斎藤茂(OTTAVA)
井内美香

沼津に里帰りしてきました!

母の出身地が静岡県沼津市なので、私も沼津市生まれ東京育ちです。子どもの頃、夏休みはいつも沼津に帰省していたので、私にとって沼津は故郷と言えます。

母と妹+愛する姪っ子ちゃんと一緒にちょこっとだけ里帰りしてきました。昨年は夏でしたが、今年は秋。秋の里帰りはいいですね!暑くもなく、寒くもなく理想的でした。親戚の皆さんにも会えて幸せな2日間でした。

 

そして、沼津と言えばそう、ひ・も・の。美味しいですよ〜〜〜(笑)。

 

 

写真は千本浜です。釣り人にも人気の浜で、まさにつるべ落としの入り日を見ました。美しかった!!!

 

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日本ロッシーニ協会 設立20周年記念ガラコンサート

素晴らしい!素晴らしい!素晴らしいコンサートでした!

昨日、ロッシーニ協会のガラ・コンサートに行ってきました。いや〜、すごかったです。

 

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日本ロッシーニ協会
設立20周年記念ガラコンサート
2016年10月17日 18時30分開演 東京文化会館小ホール
主催:日本ロッシーニ協会
後援:イタリア文化会館
後援:公益財団法人 日伊協会
マネージメント:ミリオンコンサート協会

出演:
天羽明惠/家田紀子/佐藤美枝子/高橋薫子/松尾祐実菜(以上ソプラノ) 富岡明子(メッゾソプラノ) 坂口直子(コントラルト) 上原正敏/中井亮一(テノール) 大石洋史(バリトン) 三浦克次(バス=バリトン) 若林勉(バス) 工藤翔陽(助演・テノール) 田中大輝(助演・バス=バリトン)小野寺光(助演・バス=バリトン)
稲葉和歌子(ピアノ*) 金井紀子(ピアノ**) 朝岡聡(ナビゲーター)

コンサートには日本のオペラ界の第一線で活躍している歌手の方が大勢出演していました。客席はほぼ満席だったようです。ロッシーニ音楽の普及のために設立された日本ロッシーニ協会の20周年をお祝いするガラ・コンサートです。

ロッシーニの芸術を勉強し広めていこうという意図もあり、コンサートはソロの曲だけではなく、二重唱以上の重唱が多いのが特徴でした。しかも、第一部の「マオメット2世」のアンナの祈りと、第二部の「セミラーミデ」の「麗しく美しい光が」では、なんとメインの歌手の方の後ろにプリマドンナがずらりと並んで合唱部分を歌うというとんでもなく贅沢な状況が!驚いた!!!

ピアノはロッシーニを知りつくしている金井紀子さんと稲葉和歌子さん。どちらも素晴らしかったです。金井さんの輝きのある音とロッシーニの悦楽を表現する音楽、大好きです。

歌手はそれぞれ大変実力がある方ですが、それだけでなく、皆さんロッシーニの良さをきっちり表現している歌唱で、そのことに感動しました。

以下は私の勝手きわまりないミニ感想つき曲目です。感想がいらない人、ごめんなさい…笑。

 

【第一部】
《セビーリャの理髪師》
フィガロのカヴァティーナ「町の何でも屋に道を開けろ」(**) 大石洋史
(明るいバリトンの美声。言葉もクリアです。素敵でした!)

《セビーリャの理髪師》
ロジーナのカヴァティーナ「今の歌声は」(*)富岡明子
(富岡さんの音色とアジリタはまさにロッシーニ歌手。しびれます…)

《セビーリャの理髪師》
バジーリオのアリア「中傷はそよ風です」(*)若林 勉
(朝岡さんの解説によるとこのアリアは調性を低くして歌われることも多いのですが今日は原調のニ長調で歌われました。若林さんはさすがの演技力。声も張りがありました。)

《マオメット2世》
アンナの祈り「正義の神よ、このような危機にあって」(*)松尾祐実菜
(崇高な雰囲気が素敵でした。ずらりと並んだプリマドンナ達の合唱にも唖然。)

《オテッロ》
ロドリーゴのアリア「なんですと! ああ! 何をおっしゃるのです!」(**)中井亮一
(中井さんの歌は端正で表現力があり、技巧が技巧に終わりません。しかし凄い曲ですね!)

《湖の女》
エーレナとマルコムの小二重唱「私は生きていられません」(**)家田紀子/阪口直子
(マルコムを女性が歌うことにより、恋愛ムードが高まるのですね。ロッシーニ、わかっていますねぇ…)

《セビーリャの理髪師》
ロジーナとフィガロの二重唱「それでは私なのね(*)高橋薫子/大石洋史
(可愛い、可愛い二重唱です。)

《ラ・チェネレントラ》
六重唱「あなたなのですね?」(*)
松尾祐実菜/富岡明子/阪口直子/工藤翔陽/大石洋史/若林 勉
(坂口さんがアンジェリーナ(チェネレントラ)。なんというコントラルトの美声。惚れた…)

《アルジェのイタリア女》
リンドーロとムスタファの二重唱「妻を娶る気になったのなら」(**)上原正敏/三浦克次
(これすっごく面白かったです。お二人とも早口言葉が上手いだけでなく、音楽を使った演技がすごいんですよね。しかもベテランなのに二人とも声がフレッシュ。こうでなくちゃ!)

《アルジェのイタリア女》
第1幕フィナーレ「お殿さま、旅立ちの前に」(**)
天羽明惠/阪口直子/富岡明子/上原正敏/田中大揮/大石洋史/三浦克次
(天羽さんのエルヴィーラが際立っていました。富岡さんの上から目線のイザベッラ、ぜひオペラの舞台で観たい❤。ぴったりの役柄ではないでしょうか〜〜〜〜。アンサンブルも立派だった。)

 

──休憩20分

 

【第二部】
《セミラーミデ》
セミラーミデのカヴァティーナ「麗しく美しい光が」(**)佐藤美枝子
(このコンサートで一番ガツンとやられた演目でした。凄い歌唱でした。女性コーラスも入り豪華、豪華。佐藤さんの描く妖艶なセミラーミデ。素晴らしかった!!!!)

《セミラーミデ》
セミラーミデとアルサーチェの小二重唱「忠実な心を持ち続け」(**)家田紀子/阪口直子
(アルサーチェって罪な奴ですよね(笑)。家田さんのテクニックも見事。二人の息がピッタリの歌唱でした!)

《マオメット2世》
アンナ、カルボ、エリッソの三重唱「このいまわの時に」(**)天羽明惠/富岡明子/中井亮一
(2008年にロッシーニ・オペラ・フェスティヴァルの来日公演のときに取り上げられた「マオメット2世」。その時にコーディネートをしていたので懐かしい演目です。今日の演唱も良かったです。三人とも甲乙つけがたい美歌唱でした…)

《泥棒かささぎ》
ニネッタとフェルナンドの二重唱「どう涙をこらえたら!」(*)高橋薫子/三浦克次
(これ地味な曲かと思いきや、表現力のあるお二人のおかげで感動の一曲に。情感溢れるデュエット。高橋さんの声がピュアな心情を痛い程表現し、三浦さんもコミカルな役からシリアスな父親役まで表現の幅がさすが。個人的に《泥棒かささぎ》はちょっと苦手意識のあった演目でしたが、これからはちゃんと向き合えそうです。)

《オリー伯爵》
伯爵夫人、イゾリエ、オリーの三重唱「この暗い夜の助けで」(**)
佐藤美枝子/富岡明子/上原正敏
(上原さんがあの美声でバカ殿になりきっていて完璧でした。このオペラもこの三人でぜひ全曲聴きたいです。ロッシーニはフランス語のオペラもいいなぁ。)

《ランスへの旅》
十四声の大コンチェルタート「ああ! かくも思いがけぬなりゆきに」(*)ほぼ全員
(金井先生が指揮にまわり14人をまとめていました。メリベア侯爵夫人が坂口直子さん、フォルヴィル伯爵夫人が高橋薫子さん、コリンナが天羽明惠さん、リーベンスコフが中井亮一さん、ベルフィオーレが上原正敏さん、ドン・プロフォンドが田中大輝さん、コルテーゼ夫人が家田紀子さん。演技が無くてもこの曲の演劇性はやはり卓越しています。ロッシーニ万歳!という曲でした。面白かった!)

アンコール《ギヨーム・テル》第4幕フィナーレ
(先ほどのメンバーに佐藤美枝子さんも加わり感動のフィナーレに。素晴らしい曲の素晴らしい演奏でした。)

 

以上です。それから最後になりましたが、いつも凄いな〜と思うのがナビゲーターをつとめた朝岡聡さんです。毎夏ペーザロで開かれるロッシーニ・オペラ・フェスティヴァルの常連さんだけあって、ロッシーニへの深い愛と理解に溢れたお話は、曲と演奏の理解に大きな助けとなりました。靴の裏があざやかな赤だったのにも驚きました(笑)。これからもオペラやコンサートの解説で朝岡さんが登場する時には靴にご注目を!?

 

ロッシーニ協会の会員で、実は運営委員にも名を連ねているわたくし。その割には何もしていなくて(汗)、こうやってロッシーニの音楽を享受しているだけなのですが、素晴らしいコンサートを企画、実現してくださった皆様、お疲れ様でした。最高のロッシーニをどうもありがとうございました!!!

 

講演会「モバイルフォト プロジェクト インスタグラムで見るイラン」

今日は九段下のイタリア文化会館で「モバイルフォト プロジェクト インスタグラムで見るイラン Mobile Photography Project – La vita in Iran raccontata su Instagram」という講演会の通訳をしました。

イタリア人の写真家、ジョルジョ・コズリッチ・デ・ペチーネ氏とジュリオ・ナポリターノ氏の二人が始めた、スマートフォンやタブレットを使って写真を撮影する人達のためのプロジェクトです。

Webサイト14&15 Mobile Photographers (こちらです)をベースにして、インスタグラムやSNSに投稿された大量の写真の中から、自分のスタイルを持ち、一貫して写真を撮り続けている人を探しだし、本の出版や展覧会、写真の販売などを通して広く紹介していくというものだそうです。サイトが立ち上がったのは約一年前。このプロジェクト名の『14&15』とは何かというと、お二人の誕生日をくっつけたものだそうです(笑)。

今回の講演ではそのプロジェクトの中でも、現在進行中のイランに関する企画の話がメイン・テーマでした。

きっかけとしては、Instagram(インスタグラム)のアカウントを作って、世界中のモバイル写真家達と交流をはじめたところ、なぜかイランからの写真投稿が多い事に気がついた。しかもその写真が美的にも内容的にも素晴らしいものが多い。それならばと、イランの人達が思う存分、イランの現代について写真を投稿できるハッシュタグ(#1415IRAN)を用意して、イランの今を見るための窓、もしくはイランに関する定点観測が出来る場所をつくってみた、ということでした。その結果、数ヶ月の間に1万1千点を超える写真が集まり、その写真を使ってローマで展覧会を開き、また、これからクラウドファウンディングをして写真集を出す予定だ、ということです。

その集まった写真はInstagramや彼らのサイトで実際に見ることが出来ますが、私にとっては本当に新しい世界がそこには広がっていました。これまで恥ずかしながらイランのことはほとんど知りませんでしたが、長い歴史と文化がある国であることはこれらの写真からも容易に理解できます。

ソーシャル・ネット・ワーク(SNS)の与える新しい可能性についての考察も大変興味深いものでした。これまでは名のある写真家しか自分の写真を多くの人に発信する手だてはなかった。それが現在、スマホやこれらの新しいツールの普及により、写真の世界にもある意味デモクラシーが訪れ、無名の人でも自分の写真を大勢に見てもらえる可能性が出て来た。

ただし、インスタグラムやFacebookなどの特徴としては、毎日、あまりにも多くの人が、あまりにも多くの写真を投稿するので、一週間前の写真はもう過去のものになってしまう。せっかく生まれて来た新しい良さを持った写真の数々の中から、人々の記憶に残る価値のある写真を残して行きたいという、ある意味時代に逆行する試みを、SNSからすくいあげた写真を自分たちのプラットホームに掲載し、またその中のごく一部分を本として残す、という方法でやろうとしているのだそうです。

ここですぐに分かるのは、洪水のような写真の中から、残したい写真を選ぶ作業が大変だ、ということです。しかし、ナポリターノ氏にその質問をしたところ答えは、「結局、これまでも僕たちは数えきれない写真を撮って、それを全部チェックしては残すべき写真を選んできたんだ。同じことだよ。」とのことでした。講演会のトークでは、この選ぶ、という作業には大きな責任がともなうことは我々はよく自覚している、とも語っていました。

 

 

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左がコズリッチ氏、右がナポリターノ氏です。講演の後の記念写真。

 

ところで、講演通訳の準備をしていた時に、たまたまある映画を見つけました。世界の映画祭の賞を総なめにした大変有名な映画だそうです。

『別離 جدایی نادر از سیمین』
監督・脚本・製作 アスガル・ファルハーディー
製作総指揮 ネガール・エスカンダルファール

出演者 レイラ・ハタミ、ペイマン・モアディ、シャハブ・ホセイニ、サレー・バヤト、サリナ・ファルハーディー他
音楽 サッタール・オラキ
撮影 マームード・カラリ
編集 ハイェデェ・サフィヤリ

現代のイランで、ある家族に起こるトラブルについての物語です。手に汗を握って観てしまいました。新しい窓…これからも大切にしたいです。