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熱い、熱い一日…

昨日は熱い、熱い一日でした。まず午後に、東京オペラシティで、東京フィルさんの「平日の午後のコンサート」。マエストロ・アンドレア・バッティストーニがお客さんにおしゃべりをしながら曲を演奏する、というコンサートで、タイトルは『チャイコフスキーの誘惑』。

前半の「イタリア奇想曲」(いい曲ですね〜〜〜!)と後半の交響曲第5番(RAIオケとのCDも出ています)の合間の、マエストロのおしゃべりを通訳をさせて頂きました。いつも思うのですが、おしゃべりをした後にすぐに頭を切り替えて暗譜であのような指揮が出来るマエストロ、ほんとうに不思議です。(そこで不思議がっている時点ですでにこちらが凡人すぎるのだと思いますが…。)
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そして、夜は練馬文化センターでマエストロ・ジュゼッペ・サッバティーニの声楽公開レッスンの通訳をさせて頂きました。サッバティーニさん程、熱血教師な人はこの世にはいないのではないか?と思うような熱い、熱い指導。とにかく歌手の方との距離が近いのです。よく私の姪っ子がふざけて顔をくっつけて来たりするのですが、サッバティーニ先生と歌手の方の顔の距離はそれくらい近い(笑)。あの距離で指導されて、言われた事をちゃんと理解して歌に反映出来る歌手の皆様は本当に凄いと思いました…。
 
しかも熱いだけではなく、その内容が素晴らしかったです。オペラ歌手とは、なんと緻密な頭脳と、真摯な勉強、そして情熱の元に成り立っている仕事なのでしょうか。
 

指導は多岐に渡り、まずはどのような音楽出版の楽譜を選ぶか、伴奏はどうあるべきか、そして発声に関しては調音部位(place of articulation)の詳細な説明、子音の種類(子音をいつなぜどういう理由でどのような方法で強調するか。子音が一つか重なっているのかの違いについて)、母音の種類(イタリア語の母音は7つだが唇を使う母音と舌を使う母音があり、そのスペクトルの中をどう使っていくか。また二重母音の場合をどう歌うかなど)、その使い方、発声練習のあり方、息継ぎをする場所の決め方、などから、ベル・カントのさまざまなテクニック、トリル、アッポッジャトゥーラ(長前打音)、アッチャッカトゥーラ(短前打音)などの実行の仕方、音程、軟口蓋の使い方、音の回し方、口の開け方、口の中のスペースの作り方によって音色がまったく違ってくる事、音を空中に飛ばす時のニュアンスの出し方、アクセント記号がある時にどういう場合はどういう強調の仕方をするか、などの純粋な技術の問題。

そして勿論、演奏解釈について。「ラ・ボエーム」ではリコルディ社の楽譜を開けた所にミミについての詳細なキャラクター説明がある事、「愛の妙薬」では、当時の田舎の村の青年が軍隊に入るというのは何を意味したかという事、「リゴレット」では高音が何を意味しているのか、などなど…。

まだまだ書き忘れている事はたくさんあると思いますが、ご自身が世界の一流歌劇場であれだけ素晴らしい歌を歌っていたその知識と情熱をそのまま生徒さんに注ぎ込んでいる感じでした。また、どの方も言われた事をすぐに反映させて(もともと実力がある皆さんでしたが)、目覚ましい効果を上げていたのにも感動しました。

それにしても、これらの指導を訳していると、私自身が観客としてオペラを聴いている時に、あまりに多くのことを逃している事に唖然とする程です。もったいない…。もっともっと音楽に向き合って、歌の真髄を味わえるようになるように精進しなければ…。もしかすると一番勉強になったのは私では?と思ったセミナーでした。

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このフライヤーは今月25日(木)に同じ練馬文化センターであるコンサートです。第一部では今回のレッスンで「リゴレット」ジルダを歌われた福士紗希さん他が出演するオペラ・アリアや重唱、後半はサントリーホール オペラ・アカデミーの声楽アンサンブルをマエストロ・サッバティーニが指揮をしてロッシーニ「小荘厳ミサ曲」を演奏します。サバ先生によると素晴らしい歌手がそろっているとのことでした。ピアノ2台とハルモニウムによるオリジナル編成版で演奏され、ロッシーニ財団による全集版楽譜での演奏は、今回が日本初演だそうです!くわしくはこちらへ。ぜひお聴き逃しなく〜〜〜!