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プッチーニ《蝶々夫人》

 

前回の記事もミラノ・スカラ座のことでしたが、明日のオペラ勉強会で《蝶々夫人》を取りあげるのでふたたび… 昨年の12月7日、スカラ座はプッチーニ《蝶々夫人》で開幕しました。あまりにも有名なこのオペラは1904年2月17日にスカラ座で初演されましたが、大失敗で終わった事はよく知られています。

そしてプッチーニは一晩でこのオペラを取り下げ改作にとりかかります。そして他の劇場で何度かの改作による再演を経て現行版が出来上がり、《蝶々夫人》は現代に至るまで名作として上演され続けています。

今シーズンのスカラ座の《蝶々夫人》はこの大失敗に終わった初演版を採用しての上演でした。この版での上演はスカラ座では1904年以来初めて、つまり112年ぶりとのことです。

 

今回のスカラ座のプロダクションの初日公演は生中継されました。日本でも1月23日0時(つまり22日の深夜)からBSプレミアムで放映されるそうです。私はイタリア人の友人から見せてもらいました。大変充実した上演で特に音楽は圧倒的な素晴らしさでした(演出も嫌いではなかったです)。

私は1996年に東京で上演されたパウントニー演出のミラノ初演版を観ていますが、その時に受けた印象とはまた違うものがありました。分かるのは、初演版はたしかに現行版と比べて普遍性では劣るけれど、《蝶々夫人》という日本を描いた作品としての個性はより際立っているということです。そして初演が大失敗だったのは決して作品が酷かったせいではない、ということが良く理解できます。

 

 

ミラノのデパート、リナシェンテのウィンドウはスカラ座開幕演目に合わせて《蝶々夫人》をテーマに飾られていたそうです。素敵ですね!(これは友人が送ってくれた写真です。)

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映画「ミラノ・スカラ座 魅惑の神殿」

長年オペラのコーディネートや通訳の仕事でお世話になっている東急文化村のHさんから、「そういえば井内さん、いい映画が上演される予定があるんですよ!」と教えてもらったのは秋も深まった頃でした。そう、その映画とは『ミラノ・スカラ座 魅惑の神殿』です!

 

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12月23日(金・祝)より、Bunkamuraル・シネマ他 全国ロードショー!

 

 

Hさんのおかげで配給会社さんにご紹介頂き、この映画の試写を拝見し、そしてパンフレットにも文章を書かせていただきました。なにせオペラが大好きすぎてスカラ座があるミラノに20年以上住んでしまった私のこと。スカラ座への愛情を吐露する場所を与えていただき嬉しかったです。映画をご覧になる方でご興味がある方は、ぜひパンフレットもお手に取って頂ければ幸いです。

映画はスカラ座の魅力を多面的に描いたものです。毎年12月7日のスカラ座シーズン開幕公演は、ロングドレスとブラックタイのVIP達が集う華やかさで有名ですが、ダニエル・バレンボイム指揮《フィデリオ》で開幕した2014年の、初日へ向けての緊張感漂う準備の様子を一つの軸に、スカラ座元総裁リスナー、現総裁ペレイラ、元音楽監督クラウディオ・アッバード、リッカルド・ムーティ、バレンボイム、そして現シェフのリッカルド・シャイーなどのインタビュ―、貴重なリハーサル映像、公演風景、スカラ座元エトワールのカルラ・フラッチ、アレッサンドラ・フェッリ、現エトワールのロベルト・ボッレ、そしてオペラ歌手では、レオ・ヌッチやプラシド・ドミンゴ、その他多くのアーティストの貴重な映像を観る事が出来ます。

もう一つ面白いのがスカラ座の歴史を語るために再現ヴィデオを使用している事です。ロッシーニ、ドニゼッティ、ベッリーニ等に傑作を書かせた天才興行主バルバイア、ヴェルディに《ナブッコ》を作曲させた辣腕興行主メレッリ、果ては音楽出版社リコルディの創業者ジョヴァンニ・リコルディの妻(!)、マリア・カラスを伝説のディーヴァに仕立て上げたデザイナーのビキなどに扮した俳優達が登場。彼らの演技は当時のスカラ座の雰囲気を活き活きと伝えています。

そして、私にとって嬉しかったのは、スカラ座の観客についてもきっちり取材されていた事でした。有名な「スカラ座天井桟敷の会」など、スカラ座に棲んでいるオペラ・ファンたちのオペラにかける情熱。それこそがスカラ座を世界一の歌劇場にした秘密である事を、映画はちゃんと語っています。

 

公式サイトはこちらです。
(サイトが開くとプロモーション映像が始まり音が出ます)

 

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みんなでオペラ 第四回『カルメン』(またまた素晴らしいゲストが登場!)

 

12月12日(月)に西神田の学び舎遊人さんで「みんなでオペラ」第四回『カルメン』を開きました。ご来場の皆さま、どうもありがとうございます!

 

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一応まじめにやっております…

19世紀のパリはヨーロッパ文化の中心地。文学、絵画、音楽と様々な分野で新しい才能が花開きました。その中には今日高い評価を得ている作品でも、発表当時には風当たりが強かったものがたくさんあります。小説ではフローベールの「ボヴァリー夫人」、社会派作家ゾラの「ナナ」、絵画ではクールベの「画家のアトリエ」、マネの「草上の昼食」などは、当時のアカデミックな権威からかなり厳しい批判を受けていたようです。そして、ビゼーの『カルメン』も1875年にパリのオペラ・コミック座で初演された時には、中産階級の良識ある観客が集っていたコミック座(良家の子女のお見合いによく使われたそうです)に刃傷沙汰を持ち込むなんて!とかなりの批評にさらされました。

傑作、と言われる芸術作品は様々な解釈が可能なものです。『カルメン』の中には、誰が聴いても魅力的で興奮させられるポピュラーな音楽(カルメン、エスカミーリョに関係する部分に多く使われている)、芸術性の高い叙情的なアリアなどの歌唱(ドン・ホセやミカエラの部分)、そしてフランス・オペラらしい色彩豊かな管弦楽と合唱があります。それに加えて、オッフェンバックにオペレッタの台本を提供していたメイヤック&アレヴィのコンビが作り出したドラマも素晴らしいのです。このような数多くの美点のおかげで『カルメン』は、観る人によって様々な楽しみ方が可能な作品になっているのだと思います。

 

さて、今回の勉強会にもゲストが二人ご参加くださいました!

 

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左から安藤敬さん、私、谷めぐみさん

 

一人目は指揮者の安藤敬さん。Le Vociというオペラ団体を持って精力的に活動を続けてらっしゃるマエストロです。音楽が好きでたまらない、という感じの安藤さんの指揮は私も大好きで、良く公演を聴きに行きます。今回ご来場頂いた安藤さんに突然お願いし、指揮者からみた『カルメン』ということで、ビゼーの管弦楽書法の魅力などをご説明いただきました(フルート、クラリネット、そして金管楽器の様々な使い方についてなど)。安藤さん、どうもありがとうございます!

 

もう一人は何とスペイン歌曲のエキスパート、谷めぐみさんです。谷さんはご自身のブログにもこの勉強会の事を書いて下さいました。スペイン音楽の専門家の立場から、ビゼー『カルメン』の中に表現されているスペインについて(ビゼーがどのようにスペイン音楽を使用しているかなど。スペイン音楽の特徴には「メリスマ」という旋律装飾法、「ミの旋法」、「スペイン風リズム」などがあるのですが、谷さんはキーボードを使用して具体的に例を示して教えて下さり、とても解りやすかったです!)、そしてもう一つ、カルメンが登場した時に歌う「ハバネラ」についてのエピソードをご紹介くださいました。

『カルメン』が初演された時にタイトルロールを歌ったセレスティーヌ・ガリ=マリエが、ビゼーがもともと作曲していた「ハバネラ」を気に入らず、何度も書き直しを要求した結果、ビゼーは現在歌われている「ハバネラ」を書いたのですが、実はこの旋律には本歌があったのです。それはスペインの作曲家セバスチャン・イラディエールが作曲した「エル・アレグリート」。ビゼーがこの曲を使用したいきさつについて、その歌の内容についてなど、大変興味深いお話を頂きました。谷さんのブログにはその関係の記事も載っています。おかげでスペイン音楽にとても興味が湧いてきました。谷さんは来年2017年11月19日(日)に白寿ホールでリサイタルを開かれるそうで、珠玉のスペイン歌曲の数々を聴く事が出来そうです。ぜひ行きたいです… (なお、この「ハバネラ」の経緯を含むビゼーの『カルメン』作曲にまつわる話は、春秋社から出版されている岸純信氏の著書「オペラは手ごわい」にも詳しく書かれています。)

 

 

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安藤マエストロ率いるLe Vociの次なる公演もここでご紹介しますね。規模は小さくても質の高い公演を続けている団体です。

プッチーニ『蝶々夫人』全二幕 字幕付き原語上演

2017年2月22日(水)・23日(木) 18:00 開場 18:30開演

渋谷区文化総合センター大和田 伝承ホール 全席自由 4,500円

お問い合わせ tel:080-3021-6152

東京文化会館チケットサーヴィス tel:03-5685-0650

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そして、そして。次回の「みんなでオペラ」第五回もなぜか『蝶々夫人』です。Le Voci公演の予習にぜひどうぞ〜(笑)!

「みんなでオペラ」第五回『蝶々夫人』

2017年1月16日(月)19時〜

ところ:学び舎 遊人(東京都千代田区西神田 2-4-1 東方学会新館2F)

新国立劇場の2016/17年オペラ・シーズンにあわせて、上演作品を一回一演目ずつ勉強する会です。オペラを観る前に「これだけは知っておきたい!」というポイントが分かります。

*実際に劇場でオペラを観る方も、観ない方も一緒にオペラを楽しむための講座です。

参加料:2,500円

各回20名限定。

主催:ユージンプランニング

予約とお問合せ:
ユージンプランニング(平日10時から17時)
TEL 03-3239-1906
FAX 03-3239-1907

 

(勉強会の後は、希望者で居酒屋さん行きま〜〜す。)

 

ゼッダ先生大阪滞在+みんなでオペラ第四回『カルメン』

12月3日から10日まで大阪に滞在しておりました。大阪音楽大学の特別名誉教授であるアルベルト・ゼッダ先生が、12月7日(水)にザ・シンフォニーホールで大阪音楽大学の第59回定期演奏会を指揮され、そのリハーサルと、コンサートの後で大学で行われたマスター・クラス指導の通訳をしてまいりました。

 

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これまでもゼッダ先生に関してはたびたび書いてきましたが、文化人として最高の教養と、音楽全般の深い学識、そして誰にでもまったく同じように接して下さる飾らないご性格には、何度お目にかかっても感嘆するしかありません。

そして昨年4月の『ランスヘの旅』に引き続き、演奏会のリハーサルに接していつも感じるのはゼッダ先生の素晴らしい音楽性です。音楽を深く研究しているからこその解釈に、魔法のような命が吹き込まれる瞬間。素晴らしいです…

今回のご滞在中、東京のコンサートではロッシーニの「スタバト・マーテル」と「テーティとペレーオの結婚」が演奏されましたが、大阪ではメンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」とロッシーニの「スタバト・マーテル」の組み合わせでした。「イタリア」は東京で2012年に東京フィルハーモニーを指揮して絶賛された曲目ですが、私はその時のコンサートを聴く事が出来ませんでしたので、ゼッダ先生の解釈に触れる事が出来たのは大変ありがたいことでした。疾風怒濤を経た前期ロマン派の魅力が溢れている名曲です。

「スタバト・マーテル」は大阪音楽大学ゆかりの一流のプロ歌手達が参加し、合唱団も加わっての演奏でした。生と死とに思いを馳せる深い感情表現がある、この上も無く美しい曲です。

私は本番は舞台裏におりましたので演奏会の模様は分かりませんが、大盛況で演奏も素晴らしかったそうです。ゼッダ先生の音楽に対する厳しい姿勢、そして音楽と人間に対するあふれる愛を、今回のリハーサル+本番を通して大阪音楽大学の学生のみなさんが感じて下さったら、そのお手伝いをした私も(私自身の反省点はもちろん色々あるのですが…)一番嬉しいことです。

 

そして…

 

そうこうするうちに、もう明日!に迫っているオペラ勉強会「みんなでオペラ」。明日のお題はビゼー『カルメン』です!はっきり言って大好きなオペラですが、大好きな人の魅力を語るのって以外と難しい…(汗)

明日の夜、暇だなぁ、という方、まだお席あります。ぜひどうぞ!

 

「みんなでオペラ」第四回『カルメン』

12月12日(月)19時〜

ところ:学び舎 遊人(東京都千代田区西神田 2-4-1 東方学会新館2F)

新国立劇場の2016/17年オペラ・シーズンにあわせて、上演作品を一回一演目ずつ勉強する会です。オペラを観る前に「これだけは知っておきたい!」というポイントが分かります。

*実際に劇場でオペラを観る方も、観ない方も一緒にオペラを楽しむための講座です。

参加料:2,500円

各回20名限定。

主催:ユージンプランニング

予約とお問合せ:
ユージンプランニング(平日10時から17時)
TEL 03-3239-1906
FAX 03-3239-1907

みんなで楽しくワイワイやる会です。明日は『カルメン』にちなんでフラメンコは…踊りません!!!

 

(勉強会の後は、希望者で居酒屋さん行きま〜〜す。)

 

 

 

 

英国ロイヤル・オペラ 2016/17 《ノルマ》でシネマシーズン開幕!

昨日、英国ロイヤル・オペラ・ハウス 2016/17 シネマシーズン開幕オペラ、ベッリーニ《ノルマ》の試写会に行ってきました。タイトルロールを歌ったブルガリア人ソプラノ歌手、ソーニャ・ヨンチェヴァが圧倒的な歌と演技で凄い、本当に凄い舞台でした!

ロンドンのロイヤル・オペラで《ノルマ》の新演出は1987年以来の約30年ぶりだそうで、演出を手がけたのはスペインの前衛パフォーマンス集団ラ・フラ・デルス・バルスのアレックス・オレです。オレはこの物語を現代の(非合法な軍事的)カトリック宗派と世俗的な権力とのせめぎ合いの中に描き、暗いステージをキリストの磔刑像で埋め尽くし大きなインパクトを与えました。現代に移した事で、この物語の残酷さが際立ちます。

 

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アレックス・オレ演出、アルフォンス・フローレス美術の舞台
(c) ROH/BILL COOPER

 

 

昨年は見損ねたので、英国ロイヤルの映画を観たのはこれが初めてですが、カメラ・アングルや編集が大変優れていてオペラにぐいぐい引き込まれました。演劇の国だけあって、ソロ歌手や合唱団の演技、とくに顔の表情なども上手く、素晴らしい臨場感です。パッパーノの指揮も全体を牽引していました。

しかし、オペラが進むにつれヨンチェヴァの歌があまりに素晴らしいので、私の心はすっかり彼女の演じたノルマに占領されてしまいました。ヨンチェヴァはまだ若いけれどしっかりしたテクニックを持ち、そして特に激しい気性とポリオーネへの愛情の表現が卓越しています。(ちなみにポリオーネのジョセフ・カレヤも適役でした。)

 

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ソーニャ・ヨンチェヴァのノルマ
(c) ROH/BILL COOPER

 

実はこの新演出のノルマ役にもともと予定されていたのはアンナ・ネトレプコでした。しかし今年の五月にネトレプコが降板を発表し、急遽呼ばれたのがヨンチェヴァだったのです。勿論、彼女はすでにMETやロイヤルのスターですが(ロイヤルではすでに一度グノー《ファウスト》でネトレプコの急な代役を務めているそうです)、このノルマを大成功させて、英国ロイヤルのシーズン開幕を華々しく飾ったことによって、また一つ大スターへの階段を昇ったようです。こうして次代のディーヴァは誕生するのですね。

 

英国ロイヤル・オペラ 2016/17 シネマシーズン、《ノルマ》は東京では11月25日から12月1日までの予定。そして、この後も《コジ・ファン・トゥッテ》《ホフマン物語》《イル・トロヴァトーレ》《蝶々夫人》そしてヨナス・カウフマン出演予定の《オテロ》まで名作が目白押しです。
☆詳しくはこちらです。

 

 

 

 

 

OTTAVA オペラ大好き!『VIVA! OPERA』 2016年11月号

この記事はインターネットラジオ OTTAVA “OTTAVA MALL”の番組「オペラ大好き!『VIVA! OPERA』」の記録です。2016年11月号。OTTAVAさんのページはこちらです。

 

《10月のオペラ公演レビュー》

・マスネの珍しいオペラを日本初演!
東京オペラ・プロデュースの公演
マスネ《グリゼリディス》
10月9日(土)、10日(日)新国立劇場中劇場
1901年にパリのオペラ・コミック座で初演されたオペラ。
《マノン》が魅惑的な悪女を描いた作品なら、こちらは夫に貞節を守る聖女のような女性が主人公。コミカルな悪魔も登場し、美しい音楽と楽しい物語でした!演奏、演出も出来が良く歌手たちも鮮やかな歌唱で作品を堪能する事が出来ました。

・ヤノフスキの神演奏が再び!
ウィーン国立歌劇場来日公演
R・シュトラウス《ナクソス島のアリアドネ》
2016年10月25日(火)、28日(金)、30日(日)
東京文化会館
ヤノフスキ指揮の精緻さ+ウィーン・フィルの美音。小編成ながら(だからこそ?)圧倒的な美の世界を表現。スヴェン=エリック・ベヒトルフの演出も良く、感動の公演となりました。

・藤沢市民オペラ、傑作オペラの充実の演奏!
ロッシーニ《セミラーミデ》
2016年10月30日(日)
藤沢市民会館大ホール
素晴らしい公演でした!作品の良さがしっかり分かる演奏会形式という選択も良かったと思います。安藤赴美子のタイトルロール以下、皆さん一流の歌唱でした。中でもアルサーチェの中島郁子は真のロッシーニ歌手だと感動。合唱団とオーケストラも入魂の演奏でした。

 

《11月以降のお勧め公演》

そろそろ来年のプランを練らないといけません(笑)。
2016年の東京はワーグナーに席巻されましたが、2017年はフランスやイタリアの名作オペラが目白押しです。

年内のお勧めをもう一つ!

・川端康成の官能的な小説を舞台化した現代オペラ。
《眠れる美女~House of the Sleeping Beauties~》(日本初演)
作曲:クリス・デフォート
台本:ギー・カシアス/クリス・デフォート/マリアンヌ・フォン・ケルホーフェン
2016年12月10日(土)11日(日)
東京文化会館
語り+歌+踊りのコラボレーションで描き出される川端の世界。
パトリック・ダヴァン指揮、ギー・カシアス演出、シディ・ラルビ・シェルカウイ振付。

・超有名オペラを世界が注目する若きマエストロで!
藤原歌劇団公演
ビゼー《カルメン》
2017年2月3日(金)、4日(土)、5日(日)
東京文化会館
カルメン役にはニコリッチ、コヴァリンスカをゲストに迎え、ドン・ホセ、エスカミーリョ、ミカエラは藤原歌劇団のキャストで固めた公演。山田和樹指揮日本フィルがピットに入るのも注目。岩田達宗が演出するニュー・プロダクションです。

・びわ湖ホール オペラへの招待
ドニゼッティ《連隊の娘》
2017年2月11日(土・祝)12日(日)
びわ湖ホール 中ホール
フランス語の台本にドニゼッティが作曲、パリで初演された楽しさ一杯のオペラ。
ハイCが連発されるテノールのアリアでも知られています。

・プッチーニ自身が見た壮麗な舞台美術が蘇る!
東京二期会公演
プッチーニ《トスカ》
2017年2月15日(水)16日(木)18日(土)19日(日)
東京文化会館
《トスカ》がローマで世界初演された1900年の美術デザインを再現した装置を使用しています。指揮は2017年から大野和士の後任としてリヨン国立歌劇場首席指揮者に就任するダニエーレ・ルスティオーニ。
トスカ役は木下美穂子、大村博美、カヴァラドッシは樋口達哉と城宏憲。

 

 

出演者:
斎藤茂(OTTAVA)
井内美香
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「みんなでオペラ」 第三回『セビリアの理髪師』終わりました!

 

去る11月7日(月)、西神田の学び舎 遊人さんで「みんなでオペラ」第三回『セビリアの理髪師』を無事に開催いたしました。ご来場の皆様、どうもありがとうございました!

ロッシーニの『セビリアの理髪師』は、よくもまあこんなに楽しい曲を次から次へと思いつくなぁ、と感嘆するような傑作オペラです。ロッシーニがナポリでオペラ・セリアをたくさん書き、オペラ作曲家としての黄金期を迎えていた時代に、ローマのために書いた二つの名作喜劇オペラ『セビリアの理髪師』と『ラ・チェネレントラ(シンデレラ)』。特に『セビリアの理髪師』は名作過ぎて、初演の時とはずいぶん違う形で長年上演されてきました。

このオペラで大切なのは原作がボーマルシェの同名の戯曲だということです。フランスの啓蒙思想を代表するフィガロという人物像は、ボーマルシェ自身の分身のような人物であり、同時にロッシーニの分身でもある。だから『セビリアの理髪師』というオペラはオペラ界に革命をもたらしたのですね。

 

その『セビリアの理髪師』の本来あるべき姿を私たちに知らしめてくれたのが音楽学者、指揮者、そして教育者として著名なアルベルト・ゼッダ先生です。リコルディ社から二回(1969年と2009年)『セビリアの理髪師』の楽譜のクリティカル・エディションを出しています。

勉強会の最後に、ゼッダ先生が指揮する12月のコンサートについても少し宣伝させていただきました。ここでもお知らせします(東京と大阪で各一回あります)。可能な方はぜひ行って下さいませ。ロッシーニのスピリットがそこにはあるのです!!!

 

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2016年12月1日(木)オーチャードホール 19時開演

ロッシーニ:

「スターバト・マーテル」

カンタータ「テーティとペレーオの結婚」

指揮:アルベルト・ゼッダ

ソプラノ:佐藤美枝子、砂川涼子、光岡暁恵

メッゾ・ソプラノ:向野由美子、鳥木弥生

テノール:角田和弘、中井亮一、村上敏明

バス:伊藤貴之

合唱:藤原歌劇団合唱部

管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 

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詳しくはこちらへどうぞ。

 

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そして何と!大阪の方は12月7日(水)にザ・シンフォニーホールで、やはりゼッダ先生の指揮するコンサートがあります。大阪音楽大学の定期演奏会なので、とてもお求めやすい価格になっています!

 

 

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大阪音楽大学 第59回 定期演奏会

2016年12月7日(水) 19:00 開演

[指揮]アルベルト・ゼッダ

[管弦楽]大阪音楽大学管弦楽団

[合唱]大阪音楽大学合唱団

[ソプラノ]並河 寿美

[メゾ・ソプラノ]重松 みか

[テノール]清水 徹太郎

[バス]田中 勉

F.メンデルスゾーン・バルトルディ:交響曲 第4番 イ長調 op.90 (「イタリア」)

G.ロッシーニ:スターバト・マーテル

会場 ザ・シンフォニーホール

料金 一般 1,000円

お問合わせ 大阪音楽大学 コンサート・センター

TEL 06‐6334‐2242

チケット購入

ザ・シンフォニー チケットセンター

TEL 06-6453-2333

くわしくはこちらへどうぞ。

 

 

 I M.o Alberto Zedda!!!

 

 

フェデリコ・フェリーニ『8 1/2』スケッチで見る誕生の軌跡

ちょっと日にちが経ってしまいましたが… 10月24日(月)に九段下のイタリア文化会館で「フェデリコ・フェリーニ『8 1/2』 スケッチで見る誕生の軌跡」という講演会の通訳をさせて頂きました。

映画監督フェリーニはもともと漫画家、イラストレーターをしていたこともあり、次の映画の内容を練る期間には、その映画の登場人物等に関するたくさんのスケッチを描いたそうです。今回は、イタリア文学者のダニエラ・シャローム・ヴァガータ先生が、傑作『8 1/2』が誕生するまでのフェリーニのスケッチ類をもとに、どのようにこの名画が作られていったかを話す会でした。フェリーニのスケッチはどれも素晴らしく、天才の頭の中を見ることが出来るような大変興味深い講演会でした。

 

 

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そして、講演会の予習の為に見た、フェリーニの映画。凄いですね〜。大昔に見ただけだった『道』『甘い生活』そして『8 1/2』。若い頃の私はオペラが好きだということもあって、ヨーロッパの伝統的な美に憧れていたので、フェリーニよりはヴィスコンティの方が好きでした。しかし、今見るとフェリーニのファンタジーには感嘆しかありません。本当に凄い。あの展開。何という映像美。そして『8 1/2』の結末の、マルチェロ・マストロヤンニ演ずるグイードのあの台詞「人生は祭だ。共に生きよう」。ジーンと来ます

 

このような出会いを与えてくれるイタリア文化会館に感謝です。イタリア文化会館は多方面に渡る興味深いイヴェントをたくさん開催していますが、今年は特に日伊国交150周年なので凄いイヴェントが目白押しです。イタリア語のコアな学会からホラー映画まで(笑)。しかも会館の主催イヴェントは無料!!!ぜひこちらをチェックしてみてください。

 

 

「みんなでオペラ」第三回『セビリアの理髪師』やります。

 

以下の内容でオペラ勉強会「みんなでオペラ」やります。今回はロッシーニの超・超・有名作『セビリアの理髪師』。フィガロ、フィガロ、フィガロ〜〜〜。

 

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アルベルト・ゼッダ先生の新しいクリティカル・エディションの楽譜を買って授業の準備中です。本体価格に注目!この勉強会にはお金かけてますよぉ(笑)。(これは、本当はかなり前に某店で買った時についていた値段です。もちろん間違いで、すぐに訂正して正しい金額で売っていただきましたのでご安心を。笑。)

 

「みんなでオペラ」第三回『セビリアの理髪師』

11月7日(月)19時〜

ところ:学び舎 遊人(東京都千代田区西神田 2-4-1 東方学会新館2F)

新国立劇場の2016/17年オペラ・シーズンにあわせて、上演作品を一回一演目ずつ勉強する会です。オペラを観る前に「これだけは知っておきたい!」というポイントが分かります。

*実際に劇場でオペラを観る方も、観ない方も一緒にオペラを楽しむための講座です。

参加料:2,500円

各回20名限定。

主催:ユージンプランニング

予約とお問合せ:
ユージンプランニング(平日10時から17時)
TEL 03-3239-1906
FAX 03-3239-1907

E-mail:manabiya@yujinplanning.com
(メールでご予約の際はイベント名と人数を明記してください)

 

みんなで楽しくワイワイやる会です。皆様のお申込みをお待ちしております!

(勉強会の後は、希望者で居酒屋さん行きま〜〜す。)

 

藤沢市民オペラ『セミラーミデ』に行ってきました!

先週末、10月30日に藤沢市民オペラで、ロッシーニのオペラ・セリアの最高傑作と言われる『セミラーミデ』の演奏会形式の公演を聴いてきました。素晴らしい公演でした!ブッファからセリアまでロッシーニの音楽は楽想が豊かで活気があって、本当に聴きごたえがあります。

 

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会場はペーザロで良く会うロッシーニ・マニアの皆様から、私のオペラ勉強会に来て下さる方々、そしてOTTAVAのリスナーさんにもお会い出来て楽しかったです

 

 

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この写真は藤沢市民会館のロビーです。天井が高くて素敵な雰囲気でした。

 

感想はInstagramに書きましたので、それをそのまま以下に貼り付けます。怠け者ですみません…汗。

 

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藤沢市民オペラの《セミラーミデ》行ってきました。ロッシーニのオペラ・セリアの大傑作。その真価を示すとても良い公演でした!!!

 

演奏会形式であることは、音楽に集中できて良かったです。

今回、素晴らしかったのが日本で望みうる最高級のキャストです。タイトルロールのセミラーミデを歌った安藤赴美子は、輝かしい声にアジリタもしっかりと音楽的に完成度が高く、しかもあの美貌。プリマドンナの貫禄たっぷりでした。

アッスールの妻屋秀和は日本オペラ界のトップ歌手ですが、豊かなバスの美声が広い音域でムラなく、圧倒的な歌を聴かせました。この二人のスターの起用によって今日の演奏は輝かしいものになりました。

そして、他の主役を歌ったロッシーニ歌手達の名唱は、このオペラにふさわしい格調高さと美意識で、《セミラーミデ》演奏の理想的な姿をはっきりと示してくれました。

中でも素晴らしかったのがメゾソプラノ歌手の中島郁子です。セミラーミデと同じ比重を持つ主役であるアルサーチェを、凛々しく深い感情表現を持って歌いました。彼女のアジリタを聴いていると、装飾歌唱の多彩な表現力に感嘆します。いつまでも聴いていたい最高の歌でした。(装飾のヴァリエーションも実にカッコ良かったです。)

イドレーノは物語の筋から言うとそれほど重要ではありませんが、音楽的には技巧を凝らしたテノールの難役です。山本康寛は柔らかい美声がこの役にぴったりでした。一つ目のアリアは3点ニ(D)が楽譜に書かれているそうで、この高音も楽々と響かせ素晴らしかったです。

祭司長のオーロエは登場人物達を導く役で歌う場面が多く、また合唱との絡みも多いので重要です。深みのあるバスの伊藤貴之は歌に品格と迫力があり、このオペラの要として活躍しました。

アゼーマの伊藤晴は可憐ながら歌は意志の強さを感じさせ秀逸。ミトラーネの岡坂弘毅は明るい響きの声で演技も良かったです。ニーノ王の亡霊を歌ったデニス・ビシュニャは登場は短いですが声量たっぷりで印象的でした。

藤沢市民会館は天井が高く雰囲気が良かったです。写真は吹き抜けになっている正面ロビーです。

藤沢市民オペラは、市民オペラの草分けですが、私は初めて聴きました。合唱は地元の合唱団がいくつも集まって参加しているようです。音楽性も表現力もあり素晴らしかったです。合唱指揮は浅野深雪。

そして、藤沢市民交響楽団はロッシーニのオペラの中でも凝ったスタイルを持つこの曲を躍動感ある演奏で聴かせてくれました。

これら全ての要素をまとめ上げ、《セミラーミデ》というオペラの魅力を最大限、味あわせてくれたのは指揮者、そして芸術監督を務める園田隆一郎の功績だと思います。お客さんの入りも良く、観客の反応もとても良かったです。

今回の上演は、演奏会形式での日本初演だそうです。第一幕のアルサーチェとアッスールの二重唱がカットされ、レチタティーヴォなどもカットがあったようですがそれ以外は全曲の上演でした。ナビゲーターの朝岡聡は、物語の説明に加え、このオペラをどう聴くかのヒントをたくさん教えてくれる優れた導き役でした。

藤沢市民オペラの快挙を喜び、今後の活動にも大いなるエールを送りたいと思います。